預貯金

1.財産分与の対象となる預貯金

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力関係によって築いた共有財産を清算する制度です。したがって、婚姻中に夫婦が取得した財産であれば、夫名義であっても、妻名義であっても、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。

これを夫名義の預貯金を例に見ますと、婚姻前から持っていた預貯金であれば、この預貯金は夫婦の協力によって築いた共有財産ではなく(夫の特有財産にあたります。民法762条1項)、財産分与の対象とはなりません。一方、婚姻中(別居時まで)に入金された預貯金は夫婦の共有財産として財産分与の対象となるのが原則です。

なお、婚姻中に取得した財産については、原則として財産分与の対象となる共有財産であるとの事実上の推定が働きます。そのため、夫名義の預貯金口座に、婚姻中のとある時期に100万円が入金された場合、この100万円の入金について、夫が、自身の特有財産であり財産分与の対象とならないと主張する場合には、夫の側でその旨を立証(例えば、婚姻生活とは無関係な父親の相続財産であるなど)する必要があります。

 

2.預貯金特有の問題点

⑴ 子ども名義の預貯金

ご夫婦に子どもが生まれると、将来の教育資金や結婚資金などのために、子ども名義で預貯金口座を開設し、この口座に貯金をしておくことがよくあります。このような子ども名義の預貯金口座の預金は、財産分与の対象になるかといったご相談がよくあります。

この点、同口座に入金されているお金が子ども固有の財産である場合は、もともと子どもの物ですので、財産分与の対象とはなりません。例えば、子どもがもらったお年玉を貯めている場合(そもそもお年玉が子どもの物か、親の物かは争いがあるかもしれませんが)や、子どもが自分で通帳やキャッシュカードを持って、お小遣いを入金して管理している場合などです。

これに対して、親が通帳等を管理し、給料や家計から積み立てをしているといった場合には、財産分与の対象となるでしょう。ただ、この場合も、夫婦の話し合いによって、財産分与の対象とはせずに、子ども名義のまま離婚後に子どもを養育する親が取得する場合も多くあります。

 

⑵ 夫婦の一方が別居にあたって他方名義の通帳等を持ち出してしまった場合

例えば、妻が別居の際、夫名義の残高100万円の預金通帳を持ち出してしまい、これを費消して、離婚時には残高が50万円となっていた場合、財産分与の対象は、別居時の100万円か、離婚時の50万円か、どちらでしょうか。

この点、財産分与が夫婦の協力関係によって得られた財産の清算を主眼とする制度であることから、財産分与の基準時は、別居時が基準とされます。そのため、現実には、離婚時に残高が50万円に減少していようとも、別居時の残高である100万円が残存するものとして、財産分与の対象となります。したがって、この場合、夫は、妻に対し、通常2分の1とされる分与割合に従って、50万円の支払いを財産分与として請求できることになります。

 

⑶ 相手方が相手方名義の預貯金口座を開示しない場合

離婚の紛争が表面化すると、相手方に対して、相手方名義の預貯金口座の開示を求めても、相手方が任意にはこれに応じないといった場面によく遭遇します。この場合、弁護士会を介して金融機関に照会をかける、いわゆる23条照会という手続きを利用することもできますが、費用がかかります。任意の開示が見込まれない場合には、調停を提起し裁判所からも相手方に開示を要請してもらうのがよいと考えます。また、調停手続では、裁判所を介して金融機関に照会をかける調査嘱託等の方法も法令上は用意されています。しかし、実際の運用としては、調停があくまで話し合いの場であることから、調停手続において裁判所が調査嘱託等を採用してくれることはまずありません。調停委員の説得にも応じないようであれば、残念ながら離婚訴訟を提起した上で、調査嘱託等の申立てを行う必要があります。

なお、裁判所を介した調査嘱託等の申立てをしても、裁判所が勝手に相手方名義の預貯金口座を探してきてくれるわけではありませんので、こちらで相手方が口座を開設していそうな金融機関(支店名まで)を調査しなければなりません。これから別居を考えている方は、日ごろから相手方口座存在には注意を払い、金融機関名・支店名のわかる通帳のページを写メしておいたり、金融機関から届く郵便物などをチェックしておく必要があります。

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