退職金

1.財産分与の対象となる退職金

財産分与は、お金に換算できる財産であればすべて対象となります。配偶者がサラリーマンや公務員の場合、退職金の支給があれば、これも財産分与の対象となります。配偶者がサラリーマンや公務員の場合、退職金支給の有無の確認は必須です。支給の有無は、原則として勤務先の就業規則(退職金規程)を確認することになります。

 

(1)すでに支給された退職金

配偶者がすでに勤務先を退職し、退職金が支給されている場合、婚姻期間に相当する割合の退職金は夫婦の協力によって築かれた財産として、財産分与の対象となります。この場合、支給された後、費消されずに残っている金額が具体的に分与の対象となるのが原則です。

 

(2)将来支給される退職金

離婚時にいまだ退職していない場合でも、会社の就業規則に退職金規程が存在し、離婚時にその退職金規程の支給要件を満たす場合に限り、退職金は財産分与の対象になります。

もっとも、この場合、将来の退職時までは退職金は支払われませんので、退職前に離婚する場合には、将来支払われる退職金の額を評価・計算が問題となります。

 

2.将来の退職金の計算方法

(1)別居時(離婚時まで同居している場合は離婚時)に、自己都合退職した場合の退職金額を基準とし、婚姻期間に相当する金額とする方法

将来支払われる退職金額を評価計算する方法として、最も単純明快であるため、この方法がよく用いられます。これを図式化すると以下の通りとなります。 

 

【自己都合退職金額×(同居期間(婚姻期間)÷勤務年数)】×分与割合

 

例えば、夫が勤続20年、そのうち同居期間(婚姻期間)10年、離婚時に自己都合退職すると1000万円の退職金が支給される場合を例にします。この場合、自己都合退職金1000万円×(10年÷20年)=500万円が財産分与の対象となります。これに分与割合を乗じますが、2分の1ルールに従いますと、妻が退職金の財産分与として受け取ることのできる金額は、500万円×1/2=250万円となります。

ただ、退職金規程によっては、自己都合退職の場合に支給割合の下がってしまう減額規程が存在する場合があります。この場合、⑴の方法によると、定年退職と比較して分与の対象となる退職金額が下がってしまうという不都合が生じてしまいます。

 

(2)将来定年退職した場合に支給されるであろう退職金額を計算し、中間利息を控除して、離婚時の価格に引き直して清算する方法

上記の不都合を回避するため、将来の定年退職まで勤めきったと仮定して、将来の定年退職時の退職金額を基準に中間利息を控除して離婚時に財産分与の対象となる退職金額を算出する方法があり、これを採用する裁判例も存在します。

もっとも、この方法も双方の納得できる万全の方法とは言えません。実際には、離婚後、定年を前に退職してしまう場合もあり得ますし、降格などの事情によって退職金が減額されたり、支給されなかったりする場合もあり得ます。そのため、この計算方法をとる場合、財産分与を請求される側が抵抗感を示すことになります。

したがって、この計算方法が使われるのは、定年が数年先に迫り、定年退職による退職金が支払われる可能性が高い場合など、財産分与を請求される側にとっても一定の理解が得られる可能性のある事案に限られます。実際の裁判例も6年後に定年退職が迫っているという事案でした。

 

(3)将来の退職金支給を条件として支給時に清算する方法

少し視点は変わりますが、今まで見てきた⑴の方法でも⑵の方法でも、退職金受給前に財産分与することになります。そのため、退職金以外に現金も預貯金もなく、ほかに分与できる財産がない場合には、離婚時に一括払いでの解決(清算)ができません。

この場合、当事者間の話し合いで分割払いとする方法もあり得ますが、将来退職金が支給されたときに支払ってもらうという方法も検討の余地があります。裁判例においても、「退職金を支給されたときは、金○○万円を支払え」という審判を下したものがあります。

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