不倫相手に慰謝料を請求したい

Ⅰ 不貞(不倫)の慰謝料

夫婦は互いに配偶者に対して貞操義務を負います。そのため、配偶者が不貞を行った場合、配偶者に対して慰謝料請求することができるのはもちろん、それに加えて、配偶者の不貞相手にも、配偶者としての権利を侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求することができます。

この不貞相手に対する慰謝料請求は、配偶者に対する離婚手続と並行して請求することもできますし、配偶者との離婚手続は取らずに不貞相手への慰謝料請求だけをすることもできます。また、裁判を起こす場合、配偶者と一緒に不貞相手を訴えることもできますし、配偶者は訴えずに不貞相手だけを訴えることもできます。

 

Ⅱ 婚姻関係の破綻

もっとも、すべての場合において慰謝料請求が認められるわけではありません。不貞をした配偶者とその不貞相手に慰謝料を請求できるのは、夫婦の婚姻関係が破綻する前に不貞行為があった場合に限られます。これは、婚姻関係が破綻している場合には、もはや夫婦の婚姻共同生活の平和維持という法的保護に値する権利がないと解されるからです。

そのため、不貞の事案においては、「婚姻関係破綻した後なので不貞ではない」といった反論がなされる場合がよくあります。

では、どのような状況において「婚姻関係は破綻していた」と認められるのでしょうか。

ここで、婚姻関係の破綻とは、夫婦の一方または双方が永続的な精神的肉体的結合を目的として共同生活を営む真摯な意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合をいうとされています。

その判断に当たっては、ケースバイケースで様々な事情が考慮されますが、一般的には、

 

・夫婦双方の婚姻関係継続の意思の有無
・別居の期間
・家計の負担状況
・精神的・肉体的接触の有無

 

等の事情を挙げることができます。

不貞をした配偶者から「自分は何年も前から離婚したいと思っていた」「もう何年も夫婦の間に会話はなかった」などといった主張がなされることがありますが、婚姻関係の破綻は、配偶者の一方の主観だけで判断されるものではありません。

また、「(不貞より)何年も前から夫婦生活(性交渉)がなくなっていた」という主張もよくなされます。しかし、婚姻関係とは性的な関係だけではなく、精神的な繋がりなども含めた関係から成り立つものですので、単に夫婦間に性交渉がないというだけで婚姻関係の破綻が認められるというものではありません。

婚姻関係の破綻が認められるケースの主な例としては、長期間の別居状態にある場合です。しかし、長期間の別居状態にあったからと言っても、それだけをもって直ちに婚姻関係が破綻していたと認められるわけではありません。別居の期間や別居中の交流状況、夫婦の一方に夫婦関係をやり直す意思がなかったかどうか、別居中の話し合いの状況・経緯などの事情が慎重に判断されます。

このように、婚姻関係の破綻については、個々のケースで慎重に判断されますが、いまだ別居に至らず同居中の夫婦の場合では、婚姻関係の破綻が認められる可能性は極めて低いと言えるでしょう。

 

Ⅲ 慰謝料の額

不貞相手に慰謝料をいくら請求できるのかは一概には判断できません。

不貞に至った経緯、不貞発覚後の経緯、婚姻期間、離婚の有無、未婚の子どもの有無など、様々な要素を考慮して判断されます。慰謝料の金額も、数十万円から数百万円まで、幅広く認定されています。実務的な肌感覚ですと、100~200万円の範囲で決まることが多いのではないかと思われます。

 

Ⅳ 慰謝料を請求するには

慰謝料を請求するには、まず事実関係を確認することが重要です。

配偶者の不貞を発見した場合には、後々の交渉や裁判を見据え、発見した証拠(メール、SNS、画像、ホテルの領収書など)をきちんと保存する必要があります(レシートなどは印字が消えてしまうこともありますので、コピーを取っておくなどの措置も必要かもしれません)。集めた証拠をもとに、配偶者に対し、いつから、どのくらい、誰と不貞を行ったのか確認し、記録に残しましょう。不貞相手の氏名や住所、連絡先を確認しておくことも重要です。辛く大変なことですが、離婚するにしても、やり直すにしても、正確な事実確認が次への一歩への出発点となります。

事実確認の上で、不貞相手に対し、まず協議を求めましょう。不貞相手が誠実に対応しない場合には、弁護士を通じての交渉、裁判など、断固とした対応が必要になりますので、お早めに弁護士にご相談になることをお勧めします。

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