モラルハラスメント

1.モラルハラスメントとは

モラルハラスメント(モラハラ)とは、身体への直接的な暴力ではなく、言葉や態度によって精神的な苦痛を与える行為をいいます。簡単にいうと、夫婦間におけるいじめのようなものです。

具体的には、夫が自身の偏った価値観のみに基づいて、自身の考え方を一方的に妻に押し付け、妻の行動の自由や精神的自由を奪うケースなどがよく見受けられます。

最近ではマスコミなどにも多く取り上げられ、当事務所にも、多くの方が、モラハラを原因に離婚の相談にいらっしゃいます。実際、裁判所の発表する司法統計を見ても、「精神的に虐待する」というモラハラに該当する項目が、妻から申し立てた離婚の動機の上位に位置づけられています。

 

2.モラハラ夫の特徴

モラハラを一義的に定義することは難しいと言わざるを得ませんが、一定の傾向はあります。以下の特徴に多く当てはまるほど、実は、夫からのモラハラ被害にあっている可能性が高いといえます。

 

①過去の成功をいつまでも自慢する(自己顕示欲が強い)
②自分の非を認めない(謝らない)
③夫が間違いや失敗しても人のせいにする
④自分に都合よく物事を解釈し結果ウソをつく
⑤気に食わないことがあると無視をする
⑥妻や妻の親族・友人の人格を否定し馬鹿にする
⑦妻を自分より下の存在として馬鹿にする
⑧妻の意見を全く聞かない
⑨激しく嫉妬・束縛をする
⑩突然怒り出す(大きな声を出したり、大きな音を立てて威嚇したりする)
⑪妻の話に全く共感しない
⑫妻に仕事を辞めさせたり、友人との交流を制限したりする(外界との隔絶)

 

一概には言えませんが、モラハラ夫は、プライドが高く、世間的には「人より優秀」と言われるような職業の方に多く見受けられます。意識的か無意識的かはわかりませんが、自分を「人より優秀」と見せるために、自分を高めるのではなく、自分以外の存在を貶めて、相対的に自分の存在価値を高めようとします。その最たる存在が身近にいる妻であり、妻の言動や自由を制限し、妻に対して自分より下の存在と刷り込み支配することで、自分自身を安心させようとします。

そのため、モラハラ被害者の中には、「自分が悪いんだ」と、モラハラ被害に遭っていることに気づいてすらいない方もいます。「自分が悪いんだ」と責める前に、友人等の第三者に相談することが重要です。

 

3.モラハラは離婚原因となるか

民法770条第1項に規定された離婚原因の中には、残念ながら、モラルハラスメントという言葉はありません。しかし、モラハラそのものの規定がないからといって、モラハラが離婚原因にならないわけではありません。民法770条1項5号は、離婚の一般的な原因として「(その他)婚姻を継続し難い重大な事由」と規定されており、モラハラ夫の日々の言動が、モラハラとして「婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因に該当する可能性があります。そして、離婚が認められるためには、夫の日々のモラハラ言動によって婚姻関係が修復不可能な程度に破綻しているかどうかという点が重要な判断基準となります。

モラハラは、その性質上、日々積み重ねられていくものです。そのため、不貞行為などと異なり、決定的な証拠というものが存在しない場合がほとんどで、妻の言葉だけが頼りとなりがちです。こういった場合に、「モラハラがあった」と訴えるだけでは裁判を勝ち切ることはできません。裁判では、夫のモラハラ言動について、日時やシチュエーションなど、より詳細に夫のモラハラ言動を主張する必要があります。自分の日記などに夫の行動や言葉をその都度書き留めておくことが大事です。

 

4.モラハラ被害者の方へ

少しでもつらいと感じた場合には我慢せずにご相談ください。モラルハラスメントの被害者の多くは「私が間違っている」「私が悪い」と思って我慢してしまっています。あくまでも夫婦関係は対等であるべきです。夫の言動に悩まれている方は一度ご相談ください。

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