1 はじめに
貴方は今、知らず知らずの内に、「尽くす妻」「良い妻」を演じていませんか?
日々、完璧な自分を演出し、周囲からは「恵まれた暮らし」として羨ましがられたりはしていませんか。
高収入の夫を持ち、あるいは貴方自身もキャリアを築き、恵まれた生活を送っているはずなのに、なぜか、一人になると息苦しさを感じる、夫といると辛く感じる――。
もし貴方が、夫からのスマートフォンの着信音や、LINEメッセージが届く度に不安な気持ちになったり、嫌な気持ちになったり、夫が不機嫌にならないよう慎重に言葉を選ぶなど、知らず知らずのうちに、苦しい思いをしてしまっているのであれば、それは、夫からのモラハラが原因であるかもしれません。
貴方は決して「わがまま」ではありません。「だめな妻」でもありません。
むしろ、人一倍優しく、責任感が強く、いろいろな人に配慮ができる人であるからこそ、モラハラ夫からの支配に気づくのが遅れてしまっているだけなのかもしれません。
本記事では、モラハラ(モラル・ハラスメント)という目に見えない暴力を解説するとともに、あなたが築いてきた、夫婦協力関係のもとでの財産をあるべき形に変え、新しい人生を切り開くための方法論を、弁護士という視点から解説していきます。
2 モラハラという「目に見えない支配」とは
(1) 生きていくための我慢が、あなたを追い詰めていませんか
高学歴で社会経験も豊富な女性ほど、家庭内の不和を「自分の配慮や力の不足」だと考えてしまうことがあります。
「私がもう少しうまく立ち回ることができれば」「夫が仕事のストレスを抱えているのは、私が支えきれていないからだ」などなど、こうした感情を持ってしまうのは、一般的には美徳とされているかもしれませんが、モラハラ夫が相手となると、話が大きく異なります。
モラハラ夫からすると、あなたを支配しやすくなり、隙を与えてしまうことにもなります。
そもそも、モラハラ夫は、あなたを支配していることの意識が無いことがほとんどです。
あなたがこれまで行ってきた忍耐は、モラハラをしている意識が無い夫に対しては、ほとんど意味がないものになってしまいます。
このようなあなたの頑張りは、あなたが頑張れば頑張るほど、良くない方向に進んでしまうことも多々あります。
このように、モラハラ夫への対応は、あなたの努力で解決できるような問題ではないことが多いです。
また、現状の環境は、あなたのコミュニケーションの問題でもありません。
ご自身の立ち位置を確認するためにも、弁護士への相談をお勧めいたします。
(2) モラハラ夫の二面性:家庭内での対応と外面(そとづら)とのギャップ
モラハラ夫の多くは、世間の目から見ると、「優秀なビジネスマン」「頼りになるリーダー」「子煩悩で優しいパパ」として見られていることが多いです。
これらの、世間体の良さ、外面の良さなどが、モラハラに悩んでおられる女性を孤立させる最大の要因の一つだと思います。
あなたのまわりに相談をしても、「あんなに素敵な旦那がそんなことをするはずがない」「贅沢な悩みだよ」などと、真剣に話を聞いてくれない。
また、そもそも、外形上、周りのママ友などから見ると、貴方は幸せな妻だと見られてしまい、ご友人に相談をする度に、嫉妬の対象として見られることもあります。
これらは、あなたをさらに孤独へと進めてしまう要因にもなります。
モラハラ夫が外で見せているのは、あなたのためというよりも、自分をよく見せようとする「計算されたパフォーマンス」なのかもしれません。
家庭内は、いわゆる閉ざされた空間です。
家庭内で、あなた以外誰にも分からないような状況でモラハラを行い、あなたが誰にも相談ができないという点が、モラハラ夫を巡る本質的な課題と言えるかもしれません。
3 モラハラ夫による正論の暴力
(1) どのような正論があるのか
モラハラ夫は、物理的な有形力ではなく、言葉を巧みに扱い、あなたを日々追い詰めてきます。
それも、一見すると論理的で筋が通っているように見える正論を振りかざしてきます。
「お前のためを思って言っている」
「世間一般的に考えて、そのお前の発言はおかしい」
「なぜこんな簡単なことができないのか、説明してくれ」
「みんなしてることだろう」
などなど。
彼らは、あなたのささいな失敗(例えば、買ってきた食材の選び方や、子どもへの接し方)を数時間にわたって問い詰めます。時間を空けて、1週間後にまた蒸し返されることもしばしばあります。
あなたが謝っても、「何が悪かったのか理解していない」「その謝り方は誠実ではない」と、理不尽なことを言い続け、最終的には、「お前は人間として欠陥がある」など、頑張っているあなたの人格への攻撃をするに至ります。
これは、心理的虐待とも表現することができ、頑張っている妻の現実的な感覚を徐々に狂わせ、最終的には、「自分が悪い」と思い込んでしまう女性も少なからずいらっしゃいます。
(2) 経済的な支配の仕組み
高収入のモラハラ夫に多いのが、「俺が稼いでいる」という強く、高慢な意識に基づく行動です。
モラハラ夫にとっては、家庭内は、誰からも指示指導をされる場所ではなく、稼いでいるモラハラ夫自身が絶対的に正しい場所になっていると思います。
例えば、生活費を渡す際に、1円単位の領収書の提出を強要させる。
貴方の趣味や交際費を「無駄遣い」と切り捨て、経済的な締め付けをする。
他方で、自分が高い買い物等をするときは、一切説明をせず、あなたからの口出しを許さない。
こうしたモラハラ夫による締め付けは、あなたの経済的な自由を奪い、「夫がいなければ生きていけない」という、無力感を植え付けさせられてしまいます。
(3) 自己愛の脆さ(妻がいなければ生きていけない)という感情
他方で、モラハラ夫は、精神的な弱さも併せ持っていることが多いです。
素直に妻に感謝すれば良いのですが、自分の弱さを見せたくないという感情があり、それが、優しく、文句を言わないあなたを攻撃することで、プライドを保とうとします。
そうすることでしか、モラハラ夫は、自分の価値を確認できないと言っても過言ではありません。
このようなモラハラ夫は、あなたが前に進もうとすると、執拗にあなたの足を引っ張ることをします。
あなたが楽しそうにしていることを、モラハラ夫は許すことができません。
モラハラ夫には、そのような傾向が強いと思います。
あなたとしては、普通にしているはずなのに、モラハラ夫は不機嫌になります。あなたとしては、何が悪かったのかが分からず、徐々に、モラハラ夫の顔色を伺いながら生活をすることになってしまいます。
4 あなたの心は、すでに悲鳴を上げていませんか
弁護士として数多くの事案を見てきましたが、モラハラ夫の妻は、意外なほどご自身のダメージを自覚していないことが多い印象です。
以下のチェックリストを、客観的な目で見つめてください。
【モラハラ・チェックリスト】
- 身体的な反応: 夫の帰宅を知らせる車の音や、玄関の鍵が開く音が聞こえると、条件反射的に動悸がし、胃が締め付けられるように感じる。
- 顔色を伺うこと: 夫と話す際、「これを言ったら怒るだろうか」「どう言えば不機嫌にならないか」と、ご自身の頭の中で何度もシミュレーションを繰り返す。
- 孤独になっているか否か: ご自身の実家や友人と連絡を取ることを夫が嫌がる、あるいはあなたのご親族を侮辱するため、次第に友人や親族と疎遠になってしまっている。
- 日常的な謝罪: あなたが悪くない局面でも、その場を丸く収めるため、「ごめんなさい」が口癖になっていませんか。
- 子どもへの影響: モラハラ夫が子どもの前であなたを怒鳴る、「ママのここが悪い」など、あなただけでなく子どもまで洗脳されていることはありませんか。
- 経済的な締め付け: モラハラ夫から、夫自身の預貯金額を正確に把握させてもらえず、将来に対する漠然とした不安はありませんか。
もし3つ以上当てはまるなら、あなたの心は、知らず知らずの内に蝕まれている可能性があります。
5 モラハラ夫からの解放を目指して――気持ちよりも、淡々と行動をすること
離婚は、人生において大きな決断です。その上、あなたが今まで我慢をしていればしているだけ、思い入れ等もあり、離婚をすることに対し、精神的に追い込まれるようになってしまいます。
「優しくされることもある」「良いところもある」など、モラハラ夫からたまに見られる優しい側面にスポットをあてると、あなた自身、離婚を進める上で不必要なストレスがかかってしまいます。
離婚に関してモラハラ夫からくる言葉の全てに向き合うのではなく、ご自身の計画のもとで、淡々と手続きを進めることが、少しでも気持ちを楽にして離婚を進めるコツです。
そのためには、弁護士によるアドバイスが必要不可欠になると思います。
(1)客観的な事実、証拠に着目する
モラハラは目に見えません。そのため、あなたの中で大きく受け止めることもでき、また、小さく受け止めることもできます。
気持ちの面を抑えて、重視すべき事実には真摯に対応する一方、裁判所からは些細な事実と捉えられてしまう事実については、思い切って無視をする対応も必要です。
また、眠れない、食欲がないなどの症状があれば、心療内科を受診し、診断書をもらっておくと、あなた自身、モラハラ夫から受けた事実を客観的に分析することが可能になります。
(2)財産を把握する
例えば、高収入のモラハラ夫との離婚において、最も紛争化するポイントの一つとして、財産分与があげられます。
モラハラ夫は、「自分のお金」への執着が強いため、財産分与を拒否することも少なくありません。
同居中、可能であれば、夫の通帳、証券口座の明細、不動産の権利書、保険証券、確定申告書等、これらを可能な限り、写真等に撮っておく必要があります。
給与明細についても、リンクしている積立預金の情報がわかることがあり、証拠として確保しておきたいところです。
(3) 別居の重要性
同居したままの交渉は、モラハラ夫との交渉によって、かなり過酷な状況となってしまいます。
どうしても、相手の顔色を伺ってしまうため、妥協して不当な条件を飲まされてしまうこともあります。
別居をして、感情を抜きに淡々と交渉をするためには、弁護士によるサポートも重要になります。
あなたの精神的平穏を取り戻すと同時に、あなたの客観的な立ち位置を把握するためにも、別居をして離婚の手続きを進めることをお勧めしております。
6 1円も払わないというモラハラ夫への対応
モラハラ夫からは、「俺が稼いだお金だ。専業主婦のお前に渡す権利はない」と主張されることがあります。
しかしながら、この主張は根拠に欠けることが多いです。
このような、脅しともとれる主張には付き合う必要がなく、淡々と財産分与を求めることをお勧め致します。
(1) いわゆる2分の1ルールに沿った反論をすること
原則として、婚姻期間中に築いた資産は、名義がどちらであれ「共有財産」であり、いわゆる2分の1ルールに基づき、財産分与を行うことができることがほとんどです。
あなたは、家事や育児を一手に引き受け、モラハラ夫の健康を管理し、社会的な体裁を整えてきました。
そうであるからこそ、モラハラ夫は仕事に集中することができ、高収入を得ることができたのです。
いわば「内助の功」であり、夫婦共有財産の維持や寄与としては、基本的には同等に評価されることになります。
(2) 高収入であるモラハラ夫にありがちな資産防衛への意識
モラハラ夫が、医師、経営者、あるいは大手企業の役員などの場合、モラハラ夫名義の資産は多岐に渡り、また、複雑化しています。
退職金、株式・ストックオプションや、社内積立預金や、生命保険等、財産分与の対象になりうる財産が存在することも、少なからずあります。
そのような事態に備え、まずは、想定される財産を、財産目録等でまとめることをお勧めしております。
(3) 婚姻費用
勇気を持って別居をした場合、あなたはモラハラ夫に対して、生活費(婚姻費用)の請求をすることができることが多いです。
モラハラ夫が高収入であればあるほど、あなたが受け取ることのできる婚姻費用の金額は多くなります。
モラハラ夫からは、「自分勝手に出て行った奴に払うお金はない」と、攻撃的な主張をされることがあります。このような主張を受け、あなたは、婚姻費用の請求を躊躇することがあるかもしれません。
しかしながら、婚姻費用の請求は、離婚を求める妻の立場からすれば、有利な交渉のカードとなることがあります。
離婚を淡々と進めるためには、婚姻費用についても、淡々と請求をすることが重要になると考えます。
7 弁護士と協同して離婚を進めることの重要性について
本記事では、モラハラ夫に対して、淡々と離婚に関する手続きを進めることの重要性をお話ししてきました。
実際に手続きを進める上で、モラハラ夫からの言葉に対し、無視するところは無視し、戦うところは戦うという進め方が重要になるのですが、では、そのような線引きはどのように行うのでしょうか。
残念ながら、この答えは、手続きの進捗の状況、モラハラ夫の反応等から、個別具体的に対応をしていく他ありません。
時期によっても異なる対応が必要な場面もあり、その都度その都度、対応が必要になります。
ご自身で手続きを進める多くの場合、このような判断をすることが難しく、また、対応を調べるにも時間を要してしまいます。
そのような場合、弁護士に依頼をし、臨機応変に対応を変えることが可能になります。
また、そもそも、モラハラ夫と連絡を取ること自体が嫌だという女性の方もいらっしゃいます。
特に、勇気を持って別居をした後、冷静になり、冷静になればなるほど、モラハラ夫の言動が理不尽だったと理解されることもしばしばあります。
そのような場合、交渉の窓口を弁護士に委ねることも、適切な対応となります。
8 別居や離婚の先に見えてくるもの
確かに、あなたの人生にとって、離婚は大きな決断の一つです。
しかし、決して、後ろ向きな選択ではありません。
むしろ、あなた自身の生活を取り戻すことができる手段の一つです。
モラハラ夫の顔色を伺う人生を送っていると、どうしても、殻の中に閉じこもってしまい、自分らしい人生を送ることの足枷となってしまいます。
あなた自身、お仕事や子育て等、人のために人生を送る場面がたくさんあると思います。
ただでさえ、制約される事項がある中で、一番の味方である夫に対し、顔色を伺う人生は、どれだけの苦痛を伴うものであるのかは、想像に難くありません。
モラハラ夫からの別居や離婚を選択された方の多くは、その後の人生を前向きに送ることができています。
「あの生活には二度と戻りたくない」とまで仰る女性の方も、少なからずいらっしゃいます。
モラハラ夫に対し、優しく接し、配慮をし、時には自分自身を責めつつ、この記事をご覧になっている女性の方もいらっしゃることでしょう。
そのような女性の方に対し、尊厳、尊重のある人生を送る手助けができるよう、本記事を執筆致しました。
9 当法律事務所について
当事務所では、単なる「離婚手続きの代行」を超え、あなた自身の納得のもと、あるべき家庭内や社会において、あるべき姿となることのできるサポートをしております。
より良い人生について、価値観は人それぞれであり、人によっても異なりますが、あなたの価値観を最大限尊重しつつ、前に進むお手伝いをしたいと思います。
当然ながら、秘密は厳守し、相談内容は、あなたの許可なく外部に漏れることはありません。
まずは、お悩みを抱えることなく、当事務所まで相談していただければ、当事務所一同、あなたの価値観を全力でサポートさせて頂きます。
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