夫は浜松市内の会社に勤めています。⑴夫の将来の退職金は、退職前でも財産分与の対象になりますか。また、⑵退職前に将来の退職金を分けるとき、財産分与の額はどのように算出することになりますか。

Answer

⑴夫の会社の就業規則に退職金規程が存在し、その支給要件を満たし、退職金を受け取ることができる場合には、退職金は財産分与の対象になります。

⑵将来の退職金を分ける際、財産分与の対象となる金額の算出方法は以下の3パターンがあります。

 ①別居時(別居しない場合は離婚時)に、自己都合退職したと仮定した場合の退職金額を基準に算出する方法

   【自己都合退職金額×(婚姻期間(同居期間)÷勤務年数)】

 ②将来の定年退職時に支給されるであろう退職金額を計算し、中間利息を控除して、離婚時の価格に引き直して清算する方法

 ③将来の退職金支給を条件として将来の支給時に清算する方法

 

Point

⑴退職前に将来の退職金が財産分与の対象となるか。

 財産分与の対象となるのは、夫婦の協力によって得られた財産です。夫婦の協力によって得られた(得られるであろう)財産と評価できれば、財産分与の対象となり、退職金も例外ではありません。

 つまり、会社の就業規則に退職金規程が存在し、離婚時に支給要件を満たしている場合には、退職金は将来支給されることがほぼ確実といえるため、財産分与の対象になります。もっとも、退職前の退職金が財産分与の対象となるとしても、実際に退職するまでは退職金は支払われません。そこで、退職前に離婚する場合には、いまだ支払われていない将来の退職金について、財産分与の対象となる金額を算出する必要があります。

⑵財産分与の対象となる将来の退職金額の算出方法

 最もよく利用される方法は、①別居時(別居しない場合は離婚時)に、自己都合退職したと仮定した場合の退職金額を基準に、婚姻期間に相当する割合を乗ずる算出方法です。例えば、夫が勤務年数30年(そのうち婚姻期間20年)、別居時に自己都合退職すると1500万円の退職金が支給される場合を例にします。この例では、【自己都合退職金額1500万円×(婚姻期間20年÷勤務年数30年)】=1000万円が財産分与の対象となります。そして、分与割合について2分の1ルールに従うと、退職金の財産分与として、妻が受け取ることのできる金額は500万円になります。
 もっとも、この①の算出方法によると、退職金規程に自己都合退職による減額規程があると(そのような企業の方が多いと思われます)、定年退職の場合と比較して算出される退職金額が低くなってしまうという不都合が生じます。

 その不都合を回避する方法として、将来定年退職した場合の退職金額を基準に、財産分与の対象となる金額を算出する②の方法をとる裁判例もあります。しかし、実際には、定年退職までの間に、退職金が減額されたり、場合によっては全く支給されなかったりする場合もあり得ます。そのため、②の方法が使われる場面は限定的です。定年退職が数年先に迫っているなど、定年退職を前提とした退職金が支払われるのがほぼ確実視される事案に限られます。実際に②の方法をとった裁判例も、6年先に定年退職が迫っているという事案でした。定年退職まで10年以上という事案では、やはり①の方法によらざるを得ないと思われます。

 また、少し見方が変わりますが、①の方法でも②の方法でも、退職金の受給前に財産分与をしなければなりませんので、退職金のほかに財産が無い場合には、離婚時に一括払いで解決することができません。

 そこで、取りうる方法が③の方法です。実際の裁判例でも、「(夫は、妻に対し、)退職金が支給されたときは、金○○万円を支払え」という内容の審判を下したものがあります。但し、この方法も定年退職が近い場合に限られるといえます。

 以上、将来の退職金の算出方法については、3つの方法があり得ます。①の方法が最も多く用いられる方法といえますが、①~③のどの方法によるかはケースバイケースです。ご自身のケースでどの方法によるのが妥当であるか、将来の退職金の財産分与でお悩みの方は、当事務所にご相談ください。

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