私はある上場会社の会社役員に就任しており、手取りで3500万円ほどの年収があります。妻には年100万円ほどのパート収入があるようです。小学生の子どもが二人いる場合、婚姻費用や養育費はどのくらいの金額になりますか。

Answer

 年収2000万円を超える高額所得者の場合、裁判所の算定表をそのまま使えないため、下記の①から④の方法によって計算することになります。年収が3500万円の本件では、②または③の方法によって計算することが多いでしょう。

Point

 裁判所の用いる標準的算定方式は、給与所得者については2000万円を、自営業者については1567万円を上限といるため、上限を超える高額所得者についてはそのまま算定表を用いて計算することができません。そのような高額所得者の婚姻費用や養育費の計算方法としては大きく分けて以下の4つの方法があります。

① 算定表の最高額(給与所得者2000万円、自営業者1567万円)を上限とする方法

 この方法は、上限を超える収入は生活費としては使われないものと考え、その部分を除いて計算します。

 本件の場合は、夫の収入は給与所得者の上限である2000万円として計算します。

② 基礎収入の割合を修正する方法

 この方法は、基礎収入を求める際に用いる割合を通常の標準的算定方式の場合(給与所得者の場合は38%〜54%、自営業の場合は48%〜61%))よりも低く設定して計算します。割合を低くすると基礎収入の額が下がりますので、結果として婚姻費用や養育費の額も下がることとなります。過去の裁判例においては、約6000万円の総収入がある場合に27%という低い割合を用いて基礎収入を計算したものがあります。

 本件の場合は、仮に27%と38%の間である32%を用いて計算すると基礎収入は1120万円となります。これをもとに婚姻費用や養育費を算出することになります。なお、この場合、算定表を超えていますので、実際に標準的算定方式で計算をする必要があります。

③ 貯蓄率を控除する方法

 この方法は、高額所得者の場合、標準的な所得者と比較すると、資産形成や貯蓄に回る部分の割合が大きいことを考慮して、基礎収入の算定において貯蓄率を控除します。貯蓄費を控除する分だけ基礎収入が下がり、その分婚姻費用や養育費の額も下がることとなります。貯蓄率は統計に基づく数値を用います。

④ 同居中の生活レベル等から算定する方法

 この方法は、同居中の生活レベル、生活費支出状況などを参考に相当な婚姻費用を裁量で算定します。フリーハンド方式です。

 

 上記①から④のどの方法を採用するかについてですが、総収入の額によって一定の傾向があるようです。総収入が上限金額を500万円程度しか超えない場合は①を、総収入が1億円を超えるような場合は④を、総収入がその中間の場合は②ないし③を採用することが多いようです。

 もっとも、上記の使い分けも明確なものではなく、また、事案毎の個別的な事情も多分に考慮される可能性があるため、高額所得者の方は離婚事件を数多く扱っている弁護士に相談されることをお薦めいたします。

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